相続の手続きには「いつまでにやらなくちゃダメ」という時効や期限といったものはありません。人の死亡後、いつでも手続きを始めることができます。
しかし、その開始が遅くなると相続人の誰かが死んでしまったり、財産が壊れたり無くなってしまうなど色々な問題が出てくることが考えられるので、できるだけ早く相続の手続きを始めることをお勧めします。
以下に、大まかな相続の手続きのスケジュールを示しておくので、参考にしてください。
これは、相続税が発生する場合は「人の死亡の翌日から10ヵ月以内に税の申告と納税をしなければならない」というきまりがあるので、それに合わせて相続財産を分割するスケジュールになっています。
もちろん、相続税を申告する必要がない方は、人の死後いつでも相続の手続きを始めることができます。
人の死亡の日から7日以内→役所に「死亡届」を提出
3ヵ月以内
遺言書があるかどうかかの確認
(遺言書があれば家庭裁判所に「検認の申立」をする)
相続人の調査と確定
プラスの財産とマイナスの財産の調査
相続放棄・限定承認の申立
10ヵ月以内
相続財産を分ける
遺産分割協議書を作成
不動産の移転登記、財産の名義変更など
相続税の申告・納付
法律ではいつ人が「死亡した」とされるのか
1 寿命や病気による死亡の場合
医師が死亡と診断したとき
2 失踪宣告の場合(失踪=行方不明という意味)
普通失踪…行方不明者の生死不明の状態が7年間続いている場合では、行方不明になってから7年たったとき
特別失踪…飛行機事故や災害などに巻き込まれて死亡が強く疑われる状況で行方不明になり、行方不明者の生死不明の状態が1年間続いている場合では、その災難が去ったときに、行方不明者は法律的に死亡したことになります。
では、遺言書が残されていない場合は、どのように財産を引き継げばよいのでしょう。
民法という法律には「誰が」「どのくらい」の財産を引き継ぐのかが決められています。
相続人の範囲と相続できる割合は、次のようになります。
相続人になれる人
◎死亡した人の夫や妻は必ず相続人になります。
次の?@〜?Bに当てはまる人たちが相続人になる場合でも、夫や妻は常にその人たちと一緒に相続人になります。
これは、ある人が死亡したときに法律的に結婚している場合に限られるので、すでに離婚している元の夫や元の妻、見かけ上は夫婦でも実際に婚姻届を出していない内縁の関係にある人は、相続人にはなれません。
死亡した人に子ども、両親や祖父母、兄弟姉妹もいなくて、相続人が死亡した人の夫や妻だけの場合、この夫や妻は、死亡した人のすべての財産を引き継ぐことができます。
第1優先順位にいる相続人
死亡した人の子どもや孫などが、第1優先順位にいる相続人です。死亡した人の夫または妻と子どもが相続人になる場合の相続分は、夫または妻が2分の1、子どもが2分の1です。
子どもが数人いる場合は、均等に分けることになります。
たとえば、夫が妻と子ども2人と1,000万円の相続財産を残して死んだ場合、妻の相続分は2分の1なので500万円、子どもの相続分も2分の1ですが、子どもが数人いる場合は均等に分けるので、さらに半分の250万円が子ども一人当たりの相続額になります。
死亡した人に子どもがいたが先にその子供が死亡していた場合は、その死亡していた子どもの子(つまり孫)が代わりに相続できます。
たとえば、太郎(90歳)が去年死亡したので、太郎が持っていた財産を相続人で分けることになりました。
太郎には正男という息子がいましたが10年前に亡くなっています。この場合、正男の子ども(つまり太郎の孫)が正男の代わりに相続できることになります。
また、この太郎の孫も不運なことに太郎よりも先に亡くなっていた場合は、太郎の孫の子(つまり太郎のひ孫)が代わりに相続することになります。
第2優先順位にいる相続人
死亡した人の父母や祖父母などが、第2優先順位にいる相続人です。
この第2優先順位にいる相続人は、第1優先順位の相続人つまり死亡した人の子どもや孫などがいない場合にだけ、相続人になることができます。
死亡した人の夫または妻と死亡した人の父母などが相続人になる場合の相続分は、夫または妻が3分の2、父母合わせて3分の1です。
たとえば、夫が妻を残して死亡した場合(子どもはいない)で、相続財産が900万円あったとします。この夫に両親または一方の親が生きていれば、この親が妻と一緒に相続人になります。
妻の相続分は3分の2なので600万円、親は3分の1の300万円ですが、両親が生きていれば2人でこの300万円を均等に分け合うことになります。
また、両親ともにすでに死亡しているが祖父母の誰か1人でも生きている場合は、この祖父母が妻と一緒に相続人になります。
第3優先順位にいる相続人
死亡した人の兄弟姉妹が、第3優先順位にいる相続人です。
第3優先順位にいる相続人は、死亡した人に子どもや孫などがいなくて、さらに両親や祖父母などもすでに死亡している場合にのみ相続人になることができます。
死亡した人の夫または妻と死亡した人の兄弟姉妹が相続人になる場合の相続分は、夫または妻が4分の3、兄弟姉妹合わせて4分の1です。兄弟姉妹が数人いる場合は、均等に分けることになります。
たとえば、夫が妻を残して死亡した場合(子どもはいない、両親と祖父母らはすでに死亡)で、相続財産が800万円あったとします。
この夫には兄と妹がいるので、この兄と妹が妻と一緒に相続人になります。
妻の相続分は4分の3なので600万円、兄弟姉妹の相続分は4分の1の200万円ですが、兄と妹は均等に分け合うのでそれぞれ100万円ずつ相続します。
また、たとえば兄と妹のほかに姉がいたが既に死亡していた場合、その姉の子(つまり死亡した人の甥か姪)が相続人になります。
兄弟姉妹が相続人の場合、相続はこれ以上下の世代には引き継がれません。つまり甥や姪の子どもが相続人になることはありません。
ただし、死亡した内縁関係にあった夫または妻に一人も相続人がいない場合に限って、 相続財産を引き継ぐことが認められる場合があります。
これは、内縁関係にあった夫または妻が死亡した後、一方の残された人が家庭裁判所に「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)の申立て」というのをして裁判所の許可をもらって死亡した人の相続財産を引き継ぐ制度です。
必ず家庭裁判所に「申立て」をしなければならないので、「私は長い間一緒に暮らしてきたので夫婦同然だし、相続人はいないから財産をもらってしまおう」と勝手に財産を引き継ぐことはできません。
裁判所が特別縁故者の申立ての内容を判断するときには
「もしも、死亡した人が遺言書を残していれば、この内縁関係の相手に対して相続財産を引き継がせただろう」と裁判官が推測できる事実や実績があることが必要とされます。
婚姻届を出せば法律上の夫婦になり、お互いに相続財産を引き継ぐことができます。
婚姻届を出すことができない事情があるのであれば、お互いに遺言書を書いて内縁関係にある相手に財産が引き継がれるようにする、または、生きている間に財産を内縁関係にある相手にあげてしまう(いわゆる生前贈与)をすることで、内縁関係にある相手方に対して、確実に財産を残すことができます。
太郎が死亡したとき、太郎の妻のおなかの中には妊娠8ヶ月の胎児がいて、妻はその後無事に子どもを出産しました。
太郎の相続財産として銀行の預金がありますが、太郎が亡くなったときは胎児だったこの子どもは、太郎の相続財産を引き継ぐことはできるのでしょうか。
太郎が亡くなったとき、この子どもが胎児であっても後で無事に生きて産まれてくれば、 その子は相続人になることができます。
これは、法律的に「この子どもは胎児の間は相続財産を引き継ぐことはできないが、後で生きて産まれたときには太郎が死亡したときに戻って、この子どもは生きていたものと考えて、この子どもも相続財産を引き継ぐことができる」となっています。
胎児が母親のおなかの中にいる間に、遺産分割の話し合いに参加する方法はありません。
胎児が相続人の一人になることが予想される場合には、この胎児が産まれてくるまでは遺産分割の話し合いは中止して、無事に生きて産まれたあとで、この胎児を相続人の一人に加えて遺産分割の話し合いをする必要があります。
遺言書を捨てたり、隠したり、作り替えたりする行為については、わざと「←こういった行為をしよう」をいう意思のほかに、こういった行為によって自分が死亡した人の財産を引き継ぐときに、自分に有利になるようにしようという意思も必要です。
たとえば、太郎(父)が「すべての財産を長男の正男に譲る」という内容の遺言書を残して死亡したとします。遺言書を見つけた正男は「自分だけが有利になる相続は嫌だ。弟の正二や正三とも平等に相続したい」と思ったので、太郎が残したこの遺言書を、正男は弟たちに発見される前に捨ててしまいました。
このケースでは、正男は自分が有利になるように相続しようという意思はありませんので、遺言書を破棄した正男は、財産を引き継ぐ資格は失わないで、太郎の財産を引き継ぐことができます。
また、たとえば太郎が残した「すべての財産を次男の正二に譲る」という内容の遺言書を正男が最初に発見し、自分に引き継がれる財産がないことを不満に思った正男は「この遺言書がなければ、自分も財産を引き継ぐことができるかも…ヒヒヒ」と考え、太郎の遺言書を勝手に捨ててしまいました。
それから間もなく、正男が太郎の遺言書を捨ててしまったことが兄弟に知られてしまった場合、正男は財産を引き継ぐ資格を失います。
しかし、正男に子どもがいれば、その子どもが正男の代わりに相続をすることが法律的に許されています。
一度、太郎が経営する会社で働かせてみたこともありましたが、会社のお金を使い込んでしまい会社の取引先にも多大な迷惑をかけ、太郎の社会的な立場に泥を塗ってしまったことがありました。
太郎にはかなりの財産がありますので、このまま何の相続の対策もせずに太郎が死んでしまうと、多くの財産は正男に引き継がれてしまいます。
太郎は、太郎が一生懸命に働いて築いてきた財産を、放蕩息子の正男に簡単に引き継がせたくないだけではなく、正男が何の苦労もせずに財産を手に入れても、正男のためにはならないだろうと思い、太郎は正男に一銭も財産を残さない方法はないものかと考えています。
このように、相続される立場にある人に対して虐待(ぎゃくたい)をしたり、ひどく侮辱(ぶじょく)をする行為(人前で強く非難したり軽蔑する行為や発言をして、その人の社会的な評価を下げる行為)をしたり、ひどい非行行為などがあった場合に、この虐待や非行行為を受けた相続される立場にある人は、その行為をした相続人を相続人から除くことができます。
具体的にどのような手続きをして相続人から除くのかというと
相続される立場にある人(このケースでは太郎)が、家庭裁判所に「相続人の廃除の申立て」をします。裁判所から「相続人〇〇(このケースでは正男)を相続人から除くことにする」という許可を出してもらって、相続人から除くことができます。
また、相続人から除くことは、遺言書によってもすることができます。
太郎が、遺言書の中で「正男を相続人から除く」という内容を書いておくと、太郎の死亡後に遺言執行者(太郎から遺言の内容を実現するように指名された人)が家庭裁判所に「相続人の廃除の申立て」をして裁判所から許可を出してもらって、正男を相続人から除くこともできます。
相続人が相続人から除かれてしまうと、死亡した人の財産を引き継ぐ権利は完全に奪われてしまいます。
家庭裁判所は、相続人(このケースでは正男)によってどのような虐待や非行行為がされて、その行為が実際にどのくらい相続される立場にある人(太郎)に影響を与えたのかを慎重に判断して、相続人から除いてもよいものなのかどうかを検討します。
相続人が相続人から除かれるためには、社会常識的に見てもかなりひどいと思われる程度の虐待や非行行為などがなければなりません。
子どもの非行行為が少年期の一時的なものであったとか、子どもが親の反対を押し切って結婚をしたという程度の理由では、相続人を相続人から除くことは認められていません。
「相続人の廃除の申立て」によって相続人から除かれる可能性がある相続人は、遺留分を請求することができる相続人、つまり兄弟姉妹以外の相続人だけです。
(遺留分の詳しい説明は、遺留分のページをご覧下さい)
もし兄弟姉妹が相続人になる可能性があり、その兄弟姉妹に何も相続させたくないときは、そのような内容の遺言書を残すことでその目的を達成することができます。
(兄弟姉妹には遺留分はないからです)
注意しなければならないのは、たとえば太郎は正男に財産を引き継がせずに、正男の弟の正二にだけ財産を引き継がせたいので、遺言書に「正二にすべての財産を譲る」という内容を書いてしまった場合です。
正男は相続分は引き継ぐことができなくても、正男は太郎の子どもなので法律で認められた取り分(遺留分)を請求する権利までは奪われてはいません。
正男は相続分はありませんが、正二に対して法律で認められた取り分を請求することはでき、正二はこれを拒否することはできないので、結果的に正男は太郎の一定の割合の財産を引き継ぐことができることになります。
したがって、遺言書だけによる方法では、完全に相続人(正男)を相続人から除くという目的は達成できないことになります。
もし、完全に相続人から除きたいのであれば、「遺留分の放棄の申立て」をする必要があります。
さらに死亡した人の相続人になる人(夫や妻、子ども、親、祖父母、兄弟姉妹など)の戸籍・除籍・改製原戸籍などを取寄せて、相続人は生きているのか、死んでいれば誰が次の相続人になるのか、最終的な相続人は誰なのかを調べていく作業です。
この説明だけで「聞きなれない書類の名前が出てくるし…なんだか面倒だな」思われる方も多いと思います。
さらにこの作業の中で、死亡した人に「隠し子」 が発覚したり、思いもよらない人と養子縁組をしていたことが判明することも!!
信じられないかもしれませんが、決して珍しいことではありません。この調査は、できるだけ先入観を持たずに戸籍の情報に忠実に行う必要があります。
親族関係が複雑だとか相続人がたくさんいるような場合では、相続人が決まるまでに必要な戸籍などの書類はかなりの数になります。
一つ一つの戸籍をたどっていくうえ、郵便で取寄せると1通取寄せるのに最低4日かかり、それが20通として…相続人の調査だけで2,3ヵ月かかるという理由もお分かりいただけると思います。
それに、現在の戸籍はコンピューターで作られているので読みやすいのですが、昔の戸籍はすべて手書きで作られているので、非常に読みづらいことも、さらに作業を大変なものにして います。相続人の調査は、とても根気と時間が必要な作業です。
したがって、たとえば死亡した人にお金を貸していた人が、死亡した人には相続人がいないようなので誰に返してもらうように請求すればよいのか分らないときでも、相続人がいないからといって、勝手に死亡した人の財産を取ってきて、貸していたお金の支払いに充てたりすることはできません。
相続人がいるのかどうかがはっきりしない場合、死亡した人とお金や物の「貸し借り関係」など何らかの関係があった人が、家庭裁判所に「相続財産管理人の選任の申立て」をして、そこで選ばれた管理人が、本当に相続人がいないのかを調べたり、残された財産の清算作業をするので、お金を貸していた人はその管理人から貸していたお金の返還を受けることになります。
民法に明確に書かれてはいませんが、一部の相続人が参加していない相続財産の分割の話合いは無効(成立しない)とされています。音信不通で生きているのか死んでいるのかも分らない、住所が分らないなどという理由だけではその相続人を抜かして相続財産の分割の話合いをしてもその話合いは成立しません。
行方不明の相続人がいる場合、2つの方法があります。
行方不明の相続人について、家庭裁判所から失踪宣告(しっそうせんこく、失踪=行方不明の意味)を出してもらい、その人は死亡したと扱って、他の相続人が相続財産の分割の話合いを進める方法
家庭裁判所で行方不明の相続人について「不在者の財産管理人」を選んでもらい、この管理人と他の相続人が相続財産の分割の話合いを進める方法
※失踪宣告とは、行方不明者が行方不明になってから7年がたったとき、または行方不明者が飛行機事故や災害などにあって死亡が強く疑われる状況で行方不明になって1年がたったときは、その災難が去ったときにその人を死亡したことにすると家庭裁判所が決めるものです。
※家庭裁判所から「不在者の財産管理人」が選ばれた場合、他の相続人はこの管理人と相続財産の分割の話合いを進めることができます。ただし、この管理人は あくまで「管理人」なので、不在者(=行方不明者)の財産を「管理」することはできても、相続財産の分割の話合いに参加したり、実際に財産を処分(=分割)することまでは許されていません。管理人が相続財産の分割の話合いに参加する場合は、事前に家庭裁判所から許可をもらわなければなりません。
難しい表現なので、もっと具体的に書きましょう。
ある人が死亡したときに持っていた財産は、その財産がもつ権利や義務といったものも含めて「相続財産」とか「遺産」と呼ばれます。たとえばある人が不動産(土地・建物など)、動産(車などの物)、現金(銀行の預金、株券など)を残して死んだ場合、それらはもちろん相続財産になります。
また、その不動産を誰かに貸していたとすると、その貸主としての地位や権利も相続人にそのまま引き継がれますし、死亡した人が生きている間に物を売り渡す契約をしていてその途中で死んでしまった場合、その代金を受取って物を買主に引き渡す義務も相続人は引き継ぎます。
注意しなければならないのは、財産価値があるプラスの財産はもちろん相続財産になりますが、借金やローンといったマイナスの財産も相続財産になるということです。
したがって「価値がある財産だけをもらって、借金は引き継がない」ということはできません。
死亡した人に独自に認められていた権利や義務とは、たとえば選挙権、子どもへの養育費や離婚した妻への慰謝料の支払い、雇用されている会社で働く義務など「本人でなければこの権利や義務が実現できないもの」は、相続財産の対象にはなりません。
また、生命保険金の請求権(→「受取人」に指定されている人)、死亡退職金や遺族年金(→通常は夫や妻)、香典(→喪主)などは、( )内の人がそれを受取る権利があるので、相続財産には含まれません。
しかし、法律的に言えば、誰が葬儀費用を負担するのか、葬儀費用はマイナスの相続財産になるのかについては裁判の結果が分かれているので、葬儀費用は誰が負担して、どのように扱えばよいのかは決められていません。
葬儀費用を相続財産の中から精算して、残りの相続財産を相続人が分け合うということに相続人全員が賛成すれば問題はありませんが、もし相続人の中にこれに反対する人がいれば、喪主や費用を負担した人がそのまま負担せざるを得ないときもあります。
墓や仏壇などはご祖先をまつるためのものなので、死亡した長男が長い間先祖代々の墓を守ってきたとしても、このお墓は長男の相続財産にはなりません。
系譜、祭具、墳墓などは、祭祀承継者(さいししょうけいしゃ、神棚やお墓などを守っていく人)を決めて、その人が受け継ぐことになります。
これは、相続とは全く関係がないことなので、相続人でない人や相続を放棄した人も受け継ぐことができます。相続とは関係がないのですから、相続人の一人が祭祀承継者になったとしても、その人の相続分が減らされたり、法要などのための費用として相続財産から当然に多くもらうことはできません。
誰が祭祀承継者になるかについて話合いで決まらない場合は、次のことを基準に決めていくのが一般的です。
死亡した人が事前に、または遺言で誰が受け継ぐのかを指定しているときは、それによる
地域や家系で誰が受け継ぐのか慣習で決まっているときは、それによる
決まらないときは、家庭裁判所での話合いで決めることもできます。
たとえば、生命保険の受取人が「Aさん」と指定してあった場合、Aさんが相続人であろうがなかろうが、生命保険金はAさんの固有の財産になるので、この生命保険金は相続財産には入りません。
Aさんは、生命保険金を相続によって受取るのではなく、亡くなった人が生きているときに保険を契約していて、その人が死亡したことでこの保険契約の影響で、Aさんは生命保険金を受取ることになる考えられるからです。
また、受取人がただ「相続人」または「本人(死亡した人のこと)」と指定されている場合、最終的には相続人が生命保険金を受取ることになりますが、考え方は上と同じで生命保険金を相続によって受取るのではなく、死亡した人が生きているときに保険を契約していて、その人が死亡したことでこの保険契約の影響で、相続人が生命保険金を受取ることになると考えればいいのです。
たとえば、夫が妻と子供2人を残して死亡したとき2,000万円の借金があったとします。この場合、妻の法律で決められた相続の割合は2分の1なので1,000万円、子の法律で決められた相続の割合は2分の1ですが、これを2人の子が均等に負担することになるので2,000万円×1/2×1/2となり、それぞれ500万円ずつの借金を引き継ぐことになります。
家庭裁判所で相続放棄(そうぞくほうき)の手続きをとれば、マイナスの財産を引き継がなくてすみますが、プラスの財産も相続することができなくなります。
しかし、死亡した人に借金などのマイナスの財産があって、このマイナスの財産がプラスの財産を大きく上回る可能性がある場合などは、相続人は相続をしない(相続を放棄する)という選択肢も選ぶことができます。
遺言書の検認の手続が必要なのは、遺言書のもとの状態や内容を家庭裁判所が確認しておけば、あとになって、遺言書が誰か(通常は自分に不利なことが書かれていることを知っている相続人)によって作り変えられたり捨てられたりしても、裁判所がオリジナルの遺言書の内容を確認しているので、オリジナルの遺言書の内容が有効になるというわけです。
遺言書に書かれている内容が有効か無効かを決めるためのものではありません。
あくまで遺言書の状態や内容を確認するための手続です。
また、遺言書の題名が「遺言書」となっていなくても、家庭裁判所が内容を判断して「それは遺言書だ」ということもあるので、遺言書のようなものを見つけた人は、すぐに家庭裁判所に持っていきましょう。
遺言書が公証役場で作成されていて、原本(げんぽん、オリジナルの遺言書)が公証役場に保管されている場合、死亡した人がコピーとして持っていた遺言書が作り変えられたり捨てられたりしても、遺言書のオリジナルは公証役場に残っています。
したがって、公証役場で作成された遺言書は、家庭裁判所で検認の手続を受ける必要はありません。
遺言書があるのに検認の手続を受けないで、相続人が相続財産を分けてしまったり、遺言書を開けてしまった場合などは過料(かりょう、罰金みたいなもの)を払わされる可能性がありますので、注意しましょう。
遺言書が残されている場合は、遺言書に書かれている通りの方法で相続財産を分けるのが原則です。遺言書に書かれていることが遺言をした人の最後の意思表示になるのですから当然ですね。
遺言書に遺言執行者(いごんしっこうしゃ)というのが指定されていることがあります。
「遺言執行者は、遺言を書いた人の代わりに死亡した人の相続財産を分けることができる」とされているので、その場合には、遺言執行者が決める相続財産の分割の方法に従うことになります。
遺言執行者が指定されてない場合は、遺言執行者を選ぶこともできるし、選ばずに相続人間の話合いで相続財産の分割の方法を決めることもできます。
また、相続人全員が賛成すれば、遺言書に書かれているのと違う方法で相続財産を分割することもできます。ただし、この場合、相続人全員がその分割方法に賛成しなければなりませんので、一人でも反対する相続人がいれば遺言書に書かれている通りの方法で相続財産を分割することになります。
相続人間の話合いで決める
↓
話合いができない、話合いで決まらないときは、家庭裁判所に調停を申立てて、そこでの話合いで決める
↓
調停でも話合いが成立しないときは、家庭裁判所が分割の方法を強制的に決める
民法では、相続財産を分割するときは「相続財産の種類や性質、相続人の年齢、職業、心や体の状態、生活の状況、その他様々な事情を判断の材料にして相続財産の分割の方法を決めなければならない」としているので、この基準に従って話合いをします。
また、民法には法定相続人(ほうていそうぞくにん、法律で決められている相続人)の相続分がどのくらいになるのかが決められているので、相続人間の話合いや家庭裁判所での話合いでも、この法定相続人の相続分を基準にしながら話合いが進められます。
民法では、相続財産を分割するときは「相続財産の種類や性質、相続人の年齢、職業、心や体の状態、生活の状況、その他様々な事情を判断の材料にして相続財産分割の方法を決めなければならない」としているので、この話合いをするときはこの基準を大事にする必要があります。
また、家庭裁判所において話合いをする場合にも、この基準に沿って話合いを進めることとされています。
実際の相続財産をどのように分割するのかは、次のような話合いで決められます。
・死亡した人が相続財産の分割の方法を遺言書で書いていれば、それによる。
・遺言書がないときは、相続人間の話合いで決める。
・話合いができない、話合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申立ててそこでの話合いで決める。
・調停でも決まらないときは、家庭裁判所が強制的に分割の方法を決める。
現物分割(げんぶつぶんかつ)
相続財産を「この相続人にはこの土地を、あの相続人にはこの預金を」というように現物で分ける方法で、最も原則的な分割方法です。
代償分割(だいしょうぶんかつ)
たとえば、相続財産がゴルフ会員権で、数人の相続人名義にすることができない場合とか、骨董品のお茶の道具が相続財産で、みんなで分けてしまうとそのものの価値がなくなってしまう場合などは、その相続財産を一人の相続人に単独で引き継がせて、その引き継いだ相続人は他の相続人の相続分に足りない金額を代わりに金銭などでその相続人に支払う方法です。
単独で引き継いだ相続人が、他の相続人に金銭で支払いをすることができない場合は、この分割の方法をとることはできません。
換価分割(かんかぶんかつ)
相続財産の一部または全部を売却して、その売却した代金を相続人間で分ける方法です。
現物分割が最も簡単な方法です。
したがって、相続財産の分割の話合いをときは、まず現物分割で相続財産を分けることができないかを話合い、それが難しいようであれば現物分割に代償分割や換価分割を組み合わせた方法で解決できるよう話合いをしてみるとよいでしょう。
「遺産分割協議書」とは「死亡した人にはこういう相続財産があって、相続人間でどのように分けるかを話し合い、相続人全員がそれに合意しました」ということを書いた書類です。
きちんとした遺産分割協議書を作っておくと、預金の払戻しや不動産の名義変更の手続きなどがスムーズに進むことも期待できますし、この協議書があることで、後日何らかの問題が生じた場合にも備えることができます。
相続財産の分割の話合いが終了した後に、この協議書に署名・押印などがされてしまうと、話合いは有効に成立したことになるので、基本的に話合いをやり直すことはできません。
相続人となる人たちはいわば親族同士です。
「年齢や普段の付き合いなどが原因で、もらえる額より少ない相続額で納得するようにいわれた」、「身勝手に話合いを進めている相続人に言ってやりたいことがあったが、今後も親戚関係が続くことを考えると言うことができなかった」、「本を読んで見よう見まねで遺産分割協議書を作って銀行に見せたが、内容が間違っていて払戻しができなかった」などといった話はよく耳にします。
これらの事態を避けるためには、?@相続人間の話合いに中立的な第3者を入れる。?A遺産分割協議書の作成を専門家に依頼してスムーズに払戻しができるように準備してもらう、などの方法で解決することができます。
この調停は、相続財産の分割に賛成しない相続人の住所地を担当する家庭裁判所に、申立書と死亡した人や相続人の戸籍謄本などを提出して申立てします。
家庭裁判所の調停では、2名の調停委員(多くは弁護士や民生委員などの社会的な見識の広い方たちから選ばれます)と裁判官が、対立する立場にあるそれぞれの相続人の話を聞いて、妥協点や解決案などを提示してくれます。これはあくまで提案なのでその解決案を受け入れるかどうかは、相続人が決めることになります。
相続人がその解決案を受け入れることができない場合は、審判(しんぱん)という手続きに移り、家庭裁判所が強制的に相続財産の分割の話し合いをまとめる(つまり分割の方法を強制的に決めてしまう)ことになります。
しかし、相続人が調停で解決案を受け入れて調停が成立してしまうと、その調停で成立した内容は裁判の判決と同じような効果を持つので相続人全員はそれに従わなければなりません。
ただし、新しい遺言書が出てきた、新しい相続人が見つかった、相続した不動産を安く評価しすぎていて相続人間で引き継いだ相続財産に不平等があったなど、特別な場合があったときだけ、相続財産の分割の話合いをやり直すことができます。
また、相続人全員が相続財産の分割の話合いをやり直すことに賛成をしたときも、やり直しは認められます。
したがって相続財産の分割の話合いをしたり、遺産分割協議書に署名などをすることは重要で難しい行為なので、未成年者は一人では判断ができないとされています。
このような行為に未成年者が参加するためには、身近にいる両親などが大人としてアドバイスをしてあげれば良さそうなのですが、相続では未成年者が相続人として話合いに参加すると同時にその親も相続人として話合いに参加する場合があります。
たとえば、夫が妻と未成年者の子ども1人を残して死亡すると、この妻と子どもが相続人になります。子どもが相続人として相続の話合いをする相手は、死亡した人の妻つまり子どもの母親です。
この子どもが未成年で親のアドバイスを必要だからといって、母親にアドバイスを求めてしまうと母親は自分に都合のいいように相続財産の分割の方法を一人で決めてしまう恐れがあります。
こういった場合では、母親は子どもにアドバイスをすることは許されず、この母親は子どものために家庭裁判所に「特別代理人の選任の申立て」をして、その選ばれた人を子どもの代理人として、母親はこの代理人と相続財産の分割の話合いをすることになります。
相続人が、死亡した人が生きているときに持っていたすべての財産を、その財産がもつ権利や義務もすべてひっくるめて引き継ぐことをいいます。
つまりは相続人は、死亡した人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎます。「プラスの財産だけもらって、マイナスの財産はいらない」なんていうことはできません。通常は、このすべての財産を引き継ぐことを原則としているので、これをするための手続きなどはありません。
残ったプラスの財産のみを引き継ぐ方法=限定承認(げんていしょうにん)
死亡した人がプラスの財産とマイナスの財産を残して死んだ場合で、プラスの財産から借金やローンなどのマイナスの財産を支払ってしまい、残ったプラスの財産の部分のみを引き継ぐ方法です。
プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、プラスの財産は残らないのでこの方法をとることはできません。
この方法をとりたいときは、家庭裁判所に申し出ることが必要ですが、相続人全員が揃ってこの申し出をしなければなりません。相続人の中に一人でも反対する人がいれば、この方法をとることはできません。
相続放棄をすると、マイナスの財産を引き継がなくてもよくなりますが、プラスの財産も引き継ぐことができなくなります。この方法をとりたいときは限定承認とは違い、それぞれの相続人が自分が相続人になったときに単独で家庭裁判所に申し出ることができます。
相続放棄や限定承認を行うには、ある人が人が死んで自分がその人の相続人になることを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し出ることが必要です。
申し出をしないで3ヵ月が経ってしまったり、相続財産の一部を勝手にもらったり売ってしまったりした場合は、単純承認をした(プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことにした)とされて、そのあと相続放棄をすることができなくなる可能性があります。
限定承認の場合とは違い、相続人全員が揃ってこの申し出をする必要はなく、それぞれの相続人が単独でこの申し出をすることができます。相続人は、相続が始まる前つまり死亡した人が生きている間にこの申し出をすることはできません。
相続人は、相続放棄が裁判所から認められると、マイナスの財産を引き継がなくてもよくなりますが、プラスの財産も引き継ぐことができなくなります。相続放棄を認められた相続人は、初めから相続人でなかったことになるので、次の優先順位にいる相続人が相続することができることになります。
たとえば、相続の1番目の優先順位にいる相続人(死亡した人の夫や妻、子どもなど)全員が相続放棄をすると、次の優先順位の相続人(死亡した人の両親、祖父母など)が相続人になります。この両親や祖父母も死亡した人が持っていたマイナスの財産を引き継ぎたくなければ、相続放棄の申し出をすることになります。
ちょっと難しい表現になってしまいましたが、一言でいえば「兄弟姉妹以外の相続人は、必ずいくらかは相続財産を引き継ぐことができる」ということです。
たとえば、死亡した人が「私が死んだ後、私のすべての財産を〇〇財団に贈る」という遺言書を残していたとします。「これが死亡した人の意思だから」という理由で、本当にこの人のすべての財産がすべてこの財団に贈られてしまうと、この人の夫や妻、子ども、両親たちは相続人であるのに相続財産を一銭ももらうことができなくなってしまいます。
しかし、財団に財産を贈ることを遺言書に書いたくらい死亡した人の意思も固いようなので、これも叶えてあげる必要があります。
上のような遺言書によって相続財産をもらうことができなくなる相続人は、ある一定の割合の取り分(遺留分)を引渡すようにこの財団に請求することができます。
どのくらいの割合の財産が遺留分になるのかというと、父母または祖父母のみが相続人であるときは3分の1で、その他の場合は2分の1になります。
それぞれの相続人の遺留分の額は、遺留分の額を法律で決められた相続の割合に従って分割した額です。
たとえば、夫が妻と子1人を残して死亡して相続財産が4,000万円あった場合、この場合は上でいう「その他の場合」に当てはまるので、全体の遺留分の割合は2分の1ですから2,000万円が遺留分の額になります。
この2,000万円を法律で決められた相続の割合に従って分割したのが、それぞれの相続人の遺留分の額になりますので、妻の割合は2分の1なので1,000万円、子供の割合も2分の1なので1,000万円がそれぞれの遺留分の額です。
自分の取り分(遺留分)を引渡すように請求する方法は、裁判でなく書面や直接面会して請求することもできますが、「言った、言わない、聞いていない」などと後々もめないためにも、通常は内容証明郵便などを使って請求します。
この請求をすることができるのは、遺留分を請求することができる相続人が自分の取り分(遺留分)を侵害されたことを知った時から1年間、または財産を持っていた人が亡くなったときから10年間で時効になり、その後は請求することができなくなります。
太郎は、太郎のすべての財産を正男に譲り他の2人には一切の財産を引き継がせたくないと考えた場合、遺言書に「すべての遺産を正男に譲る」と書いていれば太郎が亡くなった後は、正男が太郎のすべての財産を引き継ぐことになります。
しかしすでに説明したとおり、遺言書によっても遺留分を請求できる相続人の一定の取り分(遺留分)は侵害できないので、この2人は正男に対し「僕らの取り分(遺留分)をちょうだい」と請求することができます。請求することができるのですから、正二と正三は自分たちの取り分(遺留分)を請求しないこともできます。
残念ながら遺言書だけでは太郎の意思は実現できない場合もあることになりますが、ある手続きをすると、この相続人の一定の取り分(遺留分)もこの2人は正男に請求することができなくなります。これが「遺留分の放棄」といわれる手続きです。
遺留分の放棄は、遺留分を放棄させたいと思っている人(このケースでは太郎)が生きている間に、遺留分を請求できる相続人(このケースでは正二と正三)が、家庭裁判所に「遺留分の放棄の申立て」をして裁判所の許可を得た場合に認められます。
遺留分の放棄の申立てについて、家庭裁判所は 本当なら遺留分を請求できる相続人の ?@放棄の意思?A放棄の理由の合理性や必要性?B代償性(放棄する代わりに何か別な物をもらっているか、またはすでに遺留分に相当する財産を受けとっているのか)を慎重に判断して、遺留分を放棄させることが正二と三郎にとってふさわしいのかどうかを判断します。
寄与は、次のどちらかに当てはまる相続人にのみ認められます。
?@ 死亡した人の事業を一緒に手伝っていた、または死亡した人の財産を増やすことに特別な貢献をした相続人
死亡した人の介護や世話を献身的にしてきたので、死亡した人の財産を維持・増加させることに特別な貢献をした相続人
この行為は金銭などの対価をもらわないで、タダ(無償)でされたことが必要です。事業を手伝ってきたけど給料をもらっていたような場合は特別な貢献をしたとは認められません 。
また、親族間にはお互いに助け合ったり協力し合う義務があるので、通常親族ならば助け合うだろうとされる行為(たとえば家事を手伝ったとか介護をした)をしただけでは特別な貢献 があったとは認められません。
では具体的に特別な貢献をしてきた相続人が、他の相続人より多くの財産を引き継ぐことを認められるのであれば、その額はどのように決められるのでしょうか。
一般的には、「多く引き継ぐことができる額」は「相続人の特別の貢献によって増加・維持された死亡した人の財産の額」をいいます。
たとえば、通常であれば施設に入所させる程度の重い障害がある父を長女が自宅で献身的に介護をしてきたので、施設に入所させていればかかったと思われる費用約500万円の出費を しなくてすんだのであれば、この500万円が「相続人の特別の貢献によって増加・維持された死亡した人の財産の額」になります。
実際のこの額をズバリお金で計算するのは難しいときもあるので、通常は相続人間の話合いで決めることになります。この話合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てて、裁 判所で話合いをすることもできます。
特別な貢献をした相続人 と そうでない相続人 がいる場合は、どのように相続分の計算をするのでしょう。
相続財産が7,000万円でこれを長男・二男・三男で均等に分割すること、さらに死亡した人に対して長男が1,000万円に相当する額の特別な貢献をしていて、他の相続人も長男 の特別な貢献を認めている場合を考えます。
まず、7,000万円の相続財産から特別な貢献として認められる額1,000万円を引いて、6,000万円が財産の額と考えます。
長男、次男、三男の相続分は均等なので、それぞれが2,000万円ずつの財産を引き継ぎます。
長男には特別な貢献として1,000万円を多くもらうことが認められているので長男の相続分2,000万円に特別な貢献として認められた額1,000万円を足した3,000万円 が長男の相続額になります。
このような場合は、死亡時に残されていた相続財産の額に死亡した人が特別な援助として与えた額を足した額を死亡し人の相続財産の総額と考えて、すでに特別な援助を受けている人の相続額は、相続分から特別な援助を受けた額を引いた額になります。
たとえば、長男がマンションの購入資金として1,000万円をもらっていた場合、これは特別な援助になるので死亡した人が残した財産が5,000万円だとしたら、特別な援助の額を足した6,000万円が相続財産の総額になります。
これを長男・二男・三男で相続財産を均等に分割する場合は、長男の法律で決められた相続分2,000万円からすでにもらっている特別な援助の額1,000万円を引いた残金の1,000万円が長男の相続額になり、二男、三男はそれぞれ2,000万円ずつを引き継ぐことになります。
*「法律で決められた相続財産をもらうことができる人」は、法定相続人(ほうていそうぞくにん)と呼ばれ、たとえば、夫が妻と3人の子ども、両親、兄を残して死亡した場合、相続財産を引き継ぐ第1優先順位にいるのは妻と3人の子どもなので、この4人が この「法定相続人」 と呼ばれる人たちです。両親、兄は法定相続人にはなりません。
「法律で決められた相続財産をもらうことができる人」の人数は、実際に相続したかどうかは関係なく法定相続人の人数で計算します。
3人のうちの1人の子どもが実際に相続をしなかったとしても、この相続をしなかった1人も法定相続人に含まれます。
つまり、このケースでは誰がいくら相続するかに関係なく、死亡した人が残した財産の総額が
5,000万円+(1,000万円×4人)=9,000万円以下であれば
相続税はかからないので相続税を申告・納税する必要はありません。
さらに言えば相続財産の総額が5,000万円以下であれば、法定相続人が何人いようが関係なく、相続税はかからないことになります。
この相続財産には、死亡により始めて相続人に引き継がれた財産のほか、遺言によって相続人以外の人に贈られた財産や、死亡する3年以内に相続人や相続人以外の人に贈られた財産なども含みます。
この期限までに申告をしなかった場合や、実際にもらった財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の相続税の額との不足額のほかに加算税や延滞税がかかります。
相続税の申告書の提出先は、亡くなった人の住所地を担当する税務署です。相続人の住所地を担当する税務署ではありません。
払わなければならない相続税があるのに、相続税の申告の期限までに相続財産の分割の話し合いがまとまらない場合でも、取り急ぎ法律で決められた相続分などの割合によって相続財産の金額を計算して、相続税の申告をします。その後、相続財産の分割の話合いがまとまり次第、修正申告などをして調整をします。
相続税の納税も申告期限と同じく、ある人が死亡して相続が始まった日の翌日から10ヵ月以内です。申告の期限までに申告をしても、税金を期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税がかかります。
税金は金銭で一度に納めるのが原則ですが、相続税が高額で一度で収めることができない場合は、特別に何年かに分けて税金を納める「延納」と、相続などでもらった財産そのもので納める「物納」制度があります。